サンプルの植物のパラメータを見る
PlantStudio をインストールしたフォルダ内に、いくつかの植物ライブラリ(拡張子 .pla のファイル)があります。その中からいくつかの植物を取り上げて、そのパラメータを眺めてみましょう。
オリジナルの植物ライブラリをそのまま開いても構いませんが、これからそれらのパラメータをいじくりまわしますので、それをそのまま上書き保存してしまうと、オリジナルのデータが失われてしまいます。バックアップを取っておくか、ないし、対象の植物をコピーしてから、コピーのほうを操作するようにすると良いと思います。コピーは、クリップボード経由でもできますし、あるいは、専用の植物移動ウィンドウ(Plant Mover)を用いて行ないます。
Snapdragon で遊んでみる
植物ファイル:Garden Flowers.pla
植物名 :Snapdragon (キンギョソウ、ゴマノハグサ科の一年草)
- 全体の姿を眺めてみましょう。枝分かれがなく、すっと一本に伸びた茎と、その頂部につく典型的な穂状の花房…。
- 全体に真っ直ぐな感じなのは、茎の曲がりが少ないこと、分枝がないこと、でしょうか。茎の曲がり具合は、節間:最初以外の節間の曲がり具合指数(Internodes (stems): Curving index for all internodes but first)で指定します。植物作成ウィザードで指定する「茎の曲がり具合」は、このパラメータを指定していると思われます。いろいろ値を変えて、植物の外観がどんなふうに変わるか試してみましょう。
- 分枝は、分裂組織:分枝指数(Meristems (buds): Branching index)で制御します。SnapDragon のオリジナルでは、この値が0ですね。これも値を変えて遊んでください。このパラメータも植物作成ウィザードから設定できますね。
- ランダム化を行なってみましょう。このとき、全般:乱数発生のシード(General parameters: Starting seed for random number generator)パラメータの値が変更になります。
- 全般:描画角度の揺らぎ具合(General parameters: Random sway in drawing angles)パラメータの値を大きくして、再びランダム化を行なってみましょう。変動の幅が大きくなったことがわかると思います。茎の曲がり具合ばかりでなく、ひとつひとつの花のうつむき加減とか、葉と茎とでつくる角度とかもランダムに変動しています。各種角度の指定を正確に描きたいならは、このパラメータを0にします。
- 葉は対生です。これも植物作成ウィザードで指定できますね。パラメータは、分裂組織:腋生分裂組織と葉序(Meristems (buds): Axillary meristem and leaf arrangement) です。葉セクションではなく、分裂組織セクションにあるので注意してください。葉セクションにある互生/対生の選択肢は、複葉内の小葉のつきかたです。
- 葉柄がほとんどありません。パラメータは、葉:葉が最適生体量にあるときの葉柄の長さ(Leaves: Petiole length when leaf has optimal biomass) です。葉柄の長さは、植物作成ウィザードに指定の項目があります。
- 葉と茎とで作る角度が小さくて、葉が立っています。パラメータは、葉:茎と葉柄の作る角度(Leaves: Angle between stem and petiole)です。ちょっと値を変更するだけでずいぶん見た目が変化しますね。これも植物作成ウィザードに設定項目があります。
- 葉の大きさの変更は、葉:最適葉生体量での葉3Dオブジェクトの大きさ (Leaves: Leaf 3D object scale at optimal leaf biomass) で行ないます。植物設定ウィザードの「成長後の葉の大きさ」項目に対応していると思われます。特定の葉のみを大きくしたい、というような場合には、ポージングを用います。
- 花房は、典型的な穂状花序ですね。
二次枝の数
Primary inflorescences: Number of secondary branches
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0
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二次分枝なし
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主枝上の花の数
Primary inflorescences: Number of flowers on main branch
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17
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主枝に花が17
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花柄/小花柄(花の柄)の長さ
Primary inflorescences: Pedicel (flower stalk) length
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0.1 cm
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小花柄の長さ
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- 花房につく各花がうつむいています。パラメータは、(一次)花房:花房の茎と小花柄とで作る角度(Primary inflorescences: Angle of pedicel with inflor. stem) です。
- 花と花の間の距離は、(一次)花房:(花と花の間の)節間の長さ(Primary inflorescences: Internode length (between flowers))パラメータで指定します。植物作成ウィザードの「花房内の茎/花柄の長さ」項目がこのパラメータと対応していると思われます。
- 花房の数は、全般:頂花房の数(General parameters: Number of apical (terminal) inflorescences) および全般:腋花房の数(General parameters: Number of axillary inflorescences)パラメータで指定します。植物作成ウィザードでも指定できます。SnapDragon では、頂花1、腋花0、です。試しに、腋花(房)の数を変更してみましょう。腋花(房)がついたと思います(腋花(房)の数を増やしすぎると、花が小さくなってしまうと思います。これは、花に十分なバイオマスが分配されないためです。この場合、生長やタイミングのパラメータを調整する必要があります(注1)。)。次に、頂花(房)の数を増やしてみましょう。何の変化も起こりませんね。これは、茎の先端(頂端)が1箇所しかないので、頂花(房)の数を増やしても花(房)をつける場所がないのです。頂花を増やしたいなら、分枝を行なって茎の先端の場所を増やしてやる必要があります。
- ひとつの花房あたりの花の数は、(一次)花房:主枝上の花の数(Primary inflorescences: Number of flowers on main branch)、(一次)花房:二次枝あたりの花の数(Primary inflorescences: Number of flowers per secondary branch)、(一次)花房:二次枝の数(Primary inflorescences: Number of secondary branches)各パラメータで決まります。植物の見た目では「花」に見えているものが「花房」だったりすることもあるので、「花房の数」と「ひとつの花房あたりの花の数」を区別しておきましょう。SnapDragon の場合には、花房内の二次枝がないので、(一次)花房:主枝上の花の数パラメータの値が、花の数になります。オリジナルの値は17です。
- (一次)花房:上から下へと花をつけていく (Primary inflorescences: Flowers develop from top to bottom)パラメータは、花房状の花のつく順序を決めます。アニメーション表示すると違いが分かりやすいと思います。
- 色の変更。各セクションに色の設定のパラメータがあります。横断的なパラメータセクションの「Colors」から行なってもよいかもしれません。いろいろ色を変えて、どのパラメータが植物のどの部分に対応しているのか探ってみてください。
- 3Dオブジェクトの変更。各セクションから行なうこともできますが、横断的なパラメータセクションに「3D Objects」があります。
- (注1):バイオマスの不足によって花が小さくなってしまうような場合、次のような対処法が考えられます。ア、統計パネルを見て、バイオマスに余裕があるようなら、生殖生長部分に分配されるバイオマスを増やしてやります。例えば、全般:成熟時の全生体量に占める生殖構造(花や実)の割合(General parameters: Fraction of total plant biomass at maturity in reproductive structures)パラメータなど。バイオマスに余裕がないのに生殖生長部分への分配を増やせば、栄養生長部分(茎や葉)が十分生長できなくなるかもしれません。イ、全般:成熟年齢(General parameters: Age at maturity)を増やしてやると同時に、生殖部分の生長の最大日数などを増やしてやる。など…。
Lily of valley 、根出葉など
植物ファイル:Garden Flowers.pla
植物名 :lily-of-valley (スズラン、ユリ科の多年草)
- 特徴は、根元付近に叢生する葉(根生葉)と、独特な花のつき方でしょうか。
- 根生葉は、節間をうんと短くすることで描かれています。節間:成熟時の長さ(Internodes (stems): Length at optimal biomass)パラメータで調整します。lily_of_valley のオリジナルの値は、0になっています。また、分裂組織:分枝指数(Meristems (buds): Branching index)パラメータの値が0になっているのに注意してください。短い節間から分枝が生じてそこに葉や花房がつくと、おかしな植物になってしまいます。実際に値を変更して試してみてください。
このような、節間が著しく短い植物が、春先などに急速にその節間の長さを伸ばして背が高くなる現象を「とう立ち(薹立ち、抽薹、薹は苔とも書く)」といい、boltingパラメータで設定できます。とう立ちさせる場合は、節間:成熟時の長さパラメータが0ではダメで、わずかに値を持たせます。これについては後述。
- 花のつき方は、総状花序の形式がベースになっています。
二次枝の数
Primary inflorescences: Number of secondary branches
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0
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二次分枝なし
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主枝上の花の数
Primary inflorescences: Number of flowers on main branch
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10
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主枝に花が10
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花柄/小花柄(花の柄)の長さ
Primary inflorescences: Pedicel (flower stalk) length
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1.4 cm
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小花柄の長さ
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- 花房内で花が同じ方向を向いています。これは、(一次)花房:花房茎にらせん状に花をつける(Primary inflorescences: Flowers spiral around main stem)パラメータが「no」だからです。
- 花房全体が緩やかに曲がっています。これは、花房:花の間の角度(花房茎が曲がります)(Primary inflorescences: Angle between flowers (to bend infllorescence))パラメータで制御できます。
- 花房につく花の角度は、花房:花房の茎と小花柄とで作る角度(Primary inflorescences: Angle of pedicel with inflor. stem)で調整します。
Cabbege 、とう立ちの例
植物ファイル:garden plants.pla
植物名 :Cabbege (キャベツ、アブラナ科の越年草)
- とう立ちの話が出てきたので、ここで cabbege を見ておきましょう。garden plants.pla にあります。私たちがよく目にするキャベツを真中から縦に切るとキャベツの芯が見えると思います。この芯の部分がキャベツの茎で、ここからたくさんの葉が叢生して球を作ります。春先になるとこの芯の部分がどんどん伸張してその先端にキャベツの花をつけます。キャベツの花は、アブラナ科に特徴的な花びら4枚の十字花です。
- とう立ちする前の、葉が叢生する様は、先の snapdragon の場合と同じです。
節間:成熟時の長さ (Internodes (stems): Length at optimal biomass)
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0.05 cm
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節間の長さ
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分裂組織:分枝指数 (Meristems (buds): Branching index)
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0
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分枝なし
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- とう立ちさせるには、節間セクションの bolting サブセクションのパラメータを設定します。
節間:とう立ちで増加する長さ、乗数
(Internodes (stems): Length increase due to bolting, multiplier)
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47.0
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47倍になります
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節間:とう立ち期間
(Internodes (stems): Days to bolt)
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10 days
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開花年齢からの日数です
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とう立ちは、生殖生長の始まり、すなわち、全般:開花年齢(General parameters: Age at which flowering starts)パラメータで設定した日から、とう立ち期間パラメータで設定した日数の間に、行なわれます。この cabbege の例だと、65日目から75日目までです。節間の長さは、0.05 × 47 = 2.35 cm になります。元の節間の長さが0だと、何倍しても0のままですので注意してください。
- (一次)花:花弁の数(Primary flowers: Number of petals on flower)が、なぜか3です。西洋のキャベツは花弁の数が3枚なのだろうか…。
- 花序は、総状花序を基本として、そこに二次枝の花をいくつかつけています(花房の中心の軸から二分枝するようについている花が二次枝の花です)。このあたりはいろいろいじくり回して自分の好みの形にすればいいのではないでしょうか。植物学的正確さよりも見た目でしょうから…。
Campanula
植物ファイル:garden flowers.pla
植物名 :campanula (カンパニュラ、キキョウ科の宿根草)
- 花房は、主枝に3つの花、二次枝なし、です。特徴的なのは、
(一次)花房:頂生(枝の先端)の場合、最初の花房茎の長さ (Primary inflorescences: Primary stalk length if apical (terminal))
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0.1 cm
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(一次)花房:腋生の場合、最初の花房茎の長さ (Primary inflorescences: Primary stalk length if axillary)
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0.1 cm
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(一次)花房:(花と花の間の)節間の長さ (Primary inflorescences: Internode length (between flowers))
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0.6 cm
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これらのパラメータ値がいずれも小さいために、花房の柄部分がほとんど描かれず、葉腋(および頂端)から直接3つの花の小花柄が分かれ出ているように見えることです。 - 花房の数は、頂花1、腋花10です(全般:頂花房の数(General parameters: Number of apical (terminal) inflorescences) および全般:腋花房の数(General parameters: Number of axillary inflorescences))。このあたりのことは、SnapDragon で記したことと重複します。ここで花の数を指定しても、栄養生長で、花のつく場所を十分作ってやらないと、指定した数だけの花をつけることはできません。PlantStudio では、花の数は指定でき、指定した数の花をできるだけ作製しようとしますが、花をつける場所(葉腋や茎の先端)の数を指定するパラメータはありません。それらは、各種の生長のパラメータやタイミングのパラメータが相互に作用しながらその植物が生長した結果、できるものです。
Maiden Grass
植物ファイル:garden flowers.pla
植物名 :maiden grass (ススキの仲間、イネ科)
- 私たちがよく見かけるススキとは見た目が違いますね。日本のススキは「Japanese Silver Grass」というそうです。根元付近から叢生する葉と花(房)、ほうき状の花序、つんと上方に伸びる様はススキの仲間の特徴が出ていますね。
- 根元付近から叢生する植物のパターンとして、節間:成熟時の長さ(Internodes (stems): Length at optimal biomass)パラメータの値が0になっています。これは、lily-of-vallay の場合と同じです。違っているのが、分裂組織:分枝指数(Meristems (buds): Branching index)パラメータで、lily-of-vallay では0%でしたが、maiden grass では、9%になっています。これはおそらく、花(房)のつき方と関係しています。maiden grass では、全般:頂花房の数(General parameters: Number of apical (terminal) inflorescences)パラメータが4、全般:腋花房の数(General parameters: Number of axillary inflorescences)パラメータが0です。ある程度分枝して茎の先端(頂端)をつくってやらないと頂生の花(房)を4つつけることができません。このとき、分裂組織:枝の角度(Meristems (buds): Branching angle)の値が5.4度とかなり小さめになっていることに注意してください。この値が大きいと、分枝につく花(房)と葉が、横に寝てしまうでしょう。実際に値を変えて試してみてください。
- 葉は、5枚の小葉をもつ互生の羽状複葉です。西洋のススキはこんな葉なんでしょうか?
葉:小葉の数(単葉は1)
(Leaves: Number of leaflets (1 if simple))
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5
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葉:複葉の形
(Leaves: Compound leaf shape)
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pinate
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葉:羽状複葉なら、互生 or 対生?
(Leaves: If pinnate, alternate or opposite)
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alternate
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特徴は、
葉:茎と葉柄の作る角度(Leaves: Angle between stem and petiole)パラメータの値が小さくて、茎に寄り添うように葉が立っていること、葉:葉が最適生体量にあるときの葉柄の長さ(Leaves: Petiole length when leaf has optimal biomass)パラメータの値が10cm と大きくなっていること、葉の3Dオブジェクトが細長いこと(葉:葉の3Dオブジェクト(Leaves: Leaf 3D object))、などでしょうか。これらのバラメータの指定から、「つんと上方に伸びる」感じを出していると思います。その他、葉:複葉の広がり指数(Leaves: Compound leaf spread index)パラメータや葉:フルサイズ時の複葉のおじぎ具合(Leaves: Compound leaf bend angle at full size)などもいじってみてどのように変化するか試してみてください。
- 花房は円錐花序(panicle)のパターンです。
主枝上の花の数
Primary inflorescences: Number of flowers on main branch
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4
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二次枝の数
Primary inflorescences: Number of secondary branches
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4
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二次枝あたりの花の数
Primary inflorescences: Number of flowers per secondary branch
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4
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しかし、花房全体の形や感じは、花房の角度や長さに関したパラメータで作られているように思います。角度関連のバラメータとしては、(一次)花房:花房の主枝と分枝の作る角度(Primary inflorescences: Angle of inflor. branch with inflor. stem)、(一次)花房:花の間の角度(花房茎が曲がります)(Primary inflorescences: Angle between flowers (to bend infllorescence))、(一次)花房:花房の茎と小花柄とで作る角度(Primary inflorescences: Angle of pedicel with inflor. stem)などの値が小さめで、シュッとすぼまった感じを出しています。長さ関連のパラメータでは、(一次)花房:頂生(枝の先端)の場合、最初の花房茎の長さ(Primary inflorescences: Primary stalk length if apical (terminal))が15.5cm ととても長く、この部分で穂の下に続く長い茎(?)の部分を描いています。また、(一次)花房:花柄/小花柄(花の柄)の長さ(Primary inflorescences: Pedicel (flower stalk) length)も3.3cm とし、(一次)花房:(花と花の間の)節間の長さ(Primary inflorescences: Internode length (between flowers))を0.7cm と短くすることで、先端の穂を形作っています。
その他
植物ファイル:garden plants.pla
植物名 :corn (トウモロコシ、イネ科)
雌花と雄花の例
- 一次花と二次花(雌花と雄花)を持ちます。
- 全般:植物体は一次花と二次花の両方を持つ(General parameters: Plant has both primary and secondary flowers)パラメータを「yes」にします。
- 花の数は、全般:頂花房の数(General parameters: Number of apical (terminal) inflorescences)と全般:腋花房の数(General parameters: Number of axillary inflorescences)パラメータで、一次花、二次花あわせた数を指定します。
- 一次花を腋花に、二次花を頂花に振り分けるには、一次花房:頂花(Primary inflorescences: Apical (terminal))を「no」、二次花房:頂花(Secondary inflorescences: Apical (terminal))を「yes」にします。
植物ファイル:garden plants.pla
植物名 :carrot (ニンジン、セリ科)
根の上端の表示の例
- 根の上端:地上に根の先端を描く(Root top: Root top shows above ground)パラメータを「yes」にします。3Dオブジェクトの指定、大きさや色の指定をします。3Dオブジェクトの数は5つに固定されています。
植物ファイル:garden plants.pla
植物名 :tommato (トマト、ナス科)
仮軸分枝の例
- ヘルプには、「仮軸分枝においては、頂芽は節間を一つ作った後、死んでしまい、その頂芽が作り出した側芽の一つが次の主茎を作っていきます。」とあるのですが、生長の様子を眺めていると、なにやら「ニ叉分枝」みたいに見えます。よくわかりません。
- 分裂組織:仮軸分枝(Meristems (buds): Sympodial branching)パラメータが「yes」になります。
植物ファイル:garden plants.pla
植物名 :SunFlower (ヒマワリ、キク科)
頭状花の例
- (一次)花房:頭状花序(例えばヒマワリ)(Primary inflorescences: Head type (like sunflower))パラメータが「yes」になります。