パラメータ覚え書き:生長とタイミング
PlantStudio がどんなふうに植物の生長をシミュレートしているのか、それがどのパラメータと対応しているのか、を書いてみます。ヘルプのシミュレーション内容の理解やパラメータを理解するためになどを見ておくと分かりやすいと思います。(あるいは、ヘルプをきちんと読めば、こんな文章は不要かもしれません…)。
パラメータの扱い、植物全体のバイオマスの分配
- 右の上の図は、植物が生長するにつれて、植物全体の大きさがどのように増えていくのかをグラフにしたものです。横軸が年齢(日齢)、縦軸が植物全体の大きさ(バイオマス)です。PlantStudio では、植物全体は、右上図の青線のようなS字曲線を描いて生長します。[全般:生長曲線(General:Growth curve)]パラメータを使って曲線全体の形を変形することができます。[全般:成熟年齢(General:Age at maturity)]パラメータは、右上図のB点を指定します。A点は、最大生物量(maximum biomass)です。PlantStudio の生物量はすべて、相対値で表されるので、最大生物量の絶対値を指定するパラメータはありません。
- PlantStudio は、この生長曲線に従って一日一日ごと、生物量を算出してこれを植物各部分に分配します。右上図の緑色の部分が今日一日分のバイオマス(生物量)になります。
- 今日一日分のバイオマスはまず、葉や茎などの栄養生長部分と、花や実などの生殖成長部分へと分配されます。栄養生長部分と生殖生長部分の分配割合は、年齢(日齢)の増加につれて、生殖生長部分への分配割合が増えていきます。その様子は、右の下の図のようになります。横軸が年齢(日齢)、縦軸が生殖生長部分への分配割合です。図で今日の分配の割合は、40%くらいでしょうか。[全般:開花年齢(General:Age at which flowering starts)]パラメータは、図中C点を、[全般:成熟時の全生体量に占める生殖構造(花や実)の割合(Genaral:Fraction of total plant biomass at maturity in reproductive structures)]パラメータは、D点を指定することになります。
- 栄養生長部分と生殖生長部分へと分配されたバイオマスは、次に、それぞれの植物各部分へと分配されます。
パラメータの扱い、植物各部への分配
- 茎や葉などの部分は栄養生長部分に分配されたバイオマスに対して、花や実などの部分は生殖生長部分に分配されたバイオマスに対して、自分自身が欲しいバイオマスを要求していきます。これらの要求量に応じて各部分へバイオマスが分配されます。
- 各部分の要求量の算出は、直線の生長(曲)線によるものと、S字の生長曲線によるもの、の2種類があります。
直線的に生長するもの
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節間、花房、(花)
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S字曲線に従って生長するもの
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葉、実
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(特殊なもの(後述)
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分裂組織、(花))
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- 上図は、植物各部分の生長曲線。S字曲線の例。横軸はその植物部分の年齢(日齢)。縦軸は、その植物部分の大きさ(バイオマス)。点Eは、その植物部分が理想的に成長した時の最大の大きさで、茎、葉、花などの各植物の部位の[最適生体量(Optimal biomass)]パラメータで指定できます。指定は、その植物全体の最大最適生体量(A点)に対する相対値で表します。各植物部分はE点を目指して生長するために必要なバイオマスを要求していきます。
- 上図は、模式的なものです。実際には、日によって供給されるバイオマスの条件は変わるはずだから、横軸に均等な日齢をとるならば、グラフはもっと複雑な曲線になるはずです。
- バイオマスが豊富に分配される場合、その植物部分は急速に成長します(上図左)。ただし、F点よりも短い日数で最適生体量(E点)に到達することはできません。F点は、各植物部分の[成長しきる最短日数(Minimum days to grow)]パラメータで指定します。このパラメータは、生長の速度があまりにも速くなるのを制限するパラメータです。
- 分配されるバイオマスが少ない場合は、その植物部分はゆっくりと生長します(上図右)。生長の総日数がG点を越えてしまうと、その時点で最適生体量(E点)に到達していなくても、その植物部分の生長は原則としてそこで終了となります。G点は、各植物部分の[成長しつづける最長日数(Maximum days to grow)]パラメータで指定します。
- つまり、植物各部分は、F点からG点の間の日数で、E点目指してバイオマスを奪い合います。
パラメータの扱い、植物各部への分配、分裂組織の場合
- PlantStudio において、分裂組織(芽)とは、バイオマスを蓄積する場所、です。芽は、ある一定量のバイオマスを蓄積すると、茎や葉、花房、花、実などの別の部分に「成ります(created)」。花は、(実をつけるならば、)実をつけるためにバイオマスを蓄積してから実に成ります。この場合の花の振る舞いは分裂組織の場合と同じです。
- 上図点Hは、[生成/開花/結実に必要な最適生体量の最小割合]パラメータで指定する値です。植物各部位によってパラメータ名が少し異なるかもしれません。植物部位の各最終最適生体量(点E)に対する割合で指定します。分裂組織はこの値を目指してバイオマスを蓄積して、目標に達すると、花や葉などの別のものに成ります(その分裂組織がさらに何かを作るならば、その別の何かを作るために、また0からバイオマスの蓄積を開始します。先に生成された花や葉などの部分は、独自にバイオマスを要求するようになります)。バイオマスの蓄積量がこの量より小さいと、「分裂組織」のままで、茎や葉、花に成りません。図中で橙色の部分は、「分裂組織(芽)」で、それより上(左)になると、茎や葉、花に成ります。
- 茎(節間)と花房には、[分裂組織が何かに成るまでの最小日数]パラメータ(図のI点)と[分裂組織が何かに成るまでの最大日数]パラメータ(図のJ点)があります。
- バイオマスの分配が豊富にある場合、分裂組織には急速にバイオマスの蓄積が行なわれるけれども、図のI点より短い日数で、分裂組織が(葉や茎、花などの)「何か」に成ることはできません。正確には右図のような振る舞いになるのかもしれません。このあたりよくわかりません。
- バイオマスの分配が少ない場合、分裂組織へのバイオマスの蓄積はゆっくりと行なわれますが、J点の日数を過ぎても、目標のH点のバイオマスの量を蓄積できないと、小さくても構わないから見切り発車して、葉や花に成ります。