SunFlower をスプレー咲きに
植物ファイル:garden plants.pla
植物名 :SunFlower (ヒマワリ、キク科)
「スプレー咲き」とは、ひとつの茎から枝分かれした茎にいくつもの花を咲かせることをいいます。ライブラリのオリジナルは左のように、茎の先端に1個の頭状花序をつけていますが、パラメータを操作して、右のように、複数の頭状花序をつけるようにしてみたいと思います。
やり方としては、
- 頂花(房)の数を増やす。
- 腋花(房)の数を増やす。
- 花房内の花の数を増やす。
などが考えられます。それらを組み合わせても構いません。
PlantStudio では、茎(節間)や葉の数や、枝分かれの場所や数などを正確に指定することはできません。初期条件をパラメータに指定して、シミュレーションの結果としてそれらの事柄が決まるからです(これに対して、花の数などは正確に指定できます)。
自分の思い通りの結果を得るには、どのパラメータをどんなふうに設定したらいいのか、を知っておく必要があります。「スプレー咲き」の例が、その一助になれば、と思います。
頂花(房)の数を増やす
- 全般:頂花房の数(General parameters: Number of apical (terminal) inflorescences)パラメータの値を増やします。実際にいろいろ値を変えてみてください。たぶん何も起こらないと思います。これは、茎の先端が一箇所しかなく、花をつけたくてもつける場所がないからです。ここでは4を指定することにします。
- 茎の先端の場所を作るには、分裂組織:分枝指数(Meristems (buds): Branching index)パラメータの値を増やします。例えば、全般:頂花房の数4で、分裂組織:分枝指数6〜8%くらいで4つの頂花がつくようです。必ずしも、分枝の数と頂花の数(から1を引いた数)が一致する必要はありません。分枝の数よりも頂花の数(から1を引いた数)が大きければ、すべての枝の頂に花(房)がつくことになるでしょうし、少なければ頂に花(房)のつかない枝ができるでしょう。ただし、頂に花(房)のつかない枝を作る場合、どの枝に花(房)がついて、どの枝に花(房)がつかないのかは、確率的に決まるようです(ランダム化を行なうと花(房)のつく場所が変動する)。このため、主枝の先端に花(房)がつかない事態も生じます。自分の好みの位置に花(房)がつくまで何度もランダム化を行なう必要があります。(あるいは、気に入らない位置の花(房)をポージングで「剪定」するという手もあります。ただし、ポージングはファイルには保存されず、その場限りのものです)。
- 分枝を高い位置(主枝の頂に近い位置)からも分枝しやすくするには、分裂組織:頂芽優勢の及ぶ距離(節の距離で指定)(Meristems (buds): Apical dominance strength (as node distance))パラメータの値を小さくします。分枝の位置は確率的に決まるようなので、気に入った枝になるまでランダム化を繰り返します。
- 分裂組織:二次分枝(枝からさらに枝分かれ)(Meristems (buds): Secondary branching (branches off branches))を「yes」にすると、二次分枝して、頂端の数をもっと増やせるかもしれません。
- 花(房)の数を増やすと、花が小さくなってしまうことがあるかもしれません。これは、バイオマスが花に十分に分配されないために起こると考えられるので、生長やタイミングのパラメータを調整してやります。
- 気に入った枝振りと花付きになるまでランダム化を繰り返します。枝つきの角度や長さ、太さ、色、などについては、後から調整することにします。
- 分裂組織:枝の角度(Meristems (buds): Branching angle)パラメータで、主枝と分枝とで作る角度を調整できます。ヒマワリの場合、小さめ(15度〜20度くらい)の方が綺麗に見えると思います。
- 必要ならば、枝の長さ(節間:成熟時の長さ(Internodes (stems): Length at optimal biomass))や、枝の太さ(節間:成熟時の太さ(Internodes (stems): Width at optimal biomass))を調節します。
- (一次)花房:頂生(枝の先端)の場合、最初の花房茎の長さ(Primary inflorescences: Primary stalk length if apical (terminal))パラメータで花房柄(頭状花序の下に直接つく茎)の長さを調整できます。
- 主枝上の花(房)と分枝上の花(房)は、いずれも頂花(房)なので、別々に制御することはできません。
- その他いろいろ微調整して自分の気に入ったヒマワリにしてください。
腋花(房)の数を増やす
- 全般:腋花(房)の数(General parameters: Number of axillary inflorescences)パラメータの値を増やします。おそらく、右図のように葉腋の下の方から花(房)がついていくのではないかと思います。これは、何度ランダム化を行なってもこうなるので、そのような仕様なのでしょう。
- 腋花を下の方でなく、上の方につけたい場合には、分裂組織:花になれという信号を受け取って、各芽が花になる確率(Meristems (buds): Probability each meristem will become reproductive when it gets flowering signal)パラメータを使います。正確にはわからないですが、おそらく PlantStudio は、茎の一番下にある葉腋の分裂組織に対して、「花になれという信号」を送るのでしょう。この信号を受け取った分裂組織がその命令に必ず従うならば、花は順序よく下からついていくことになるでしょう。この命令を拒否する可能性があるならば、結果として、茎の下部にある葉腋の分裂組織を出し抜いて、茎の上部にある葉腋の分裂組織にも花をつける機会が与えられる可能性が出てきます。例えば、このパラメータを0.5に設定して、ランダム化を繰り返すと、確率的に茎の上部の葉腋の分裂組織が花(房)になる場合が出てきます。ただしこの場合、全般:腋花(房)の数(General parameters: Number of axillary inflorescences)パラメータの値を、自分の望む数値よりも大きめに設定しておきます。例えば、分裂組織:花になれという信号を受け取って、各芽が花になる確率パラメータが0.5ならば、全般:腋花(房)の数パラメータで指定した値の半分は、花(房)にならない可能性があるからです。また、このパラメータは、腋花(房)ばかりでなく頂花(房)も対象にしますので、頂花(房)が消えてしまうこともあります。自分の好みの花のつき方になるまで、ランダム化を繰り返します。花(房)をつける場所を指定する方法は、頂花房/腋花房という区別以外、たぶんないと思います。
- (一次)花房:頂生(枝の先端)の場合、最初の花房茎の長さ(Primary inflorescences: Primary stalk length if apical (terminal))パラメータ、および(一次)花房:腋生の場合、最初の花房茎の長さ(Primary inflorescences: Primary stalk length if axillary)パラメータを用いて、別々に花房柄(頭状花序の下に直接つく茎)の長さを調整できます。
- あとは、「頂花(房)の数を増やす」に準じてパラメータを調整します。
花房内の花の数を増やす
- これまでの例では、「花房(inflorescence)」の数を増やしました。ここでは、「花(flowers)」の数を増やすことを考えます。花房内の花の数は、
- (一次)花房:主枝上の花の数(Primary inflorescences: Number of flowers on main branch)
- (一次)花房:二次枝あたりの花の数(Primary inflorescences: Number of flowers per secondary branch)
- (一次)花房:二次枝の数(Primary inflorescences: Number of secondary branches)
のパラメータで花の数(および二次枝)を増やすことで、花房内の花の数を増やすことができます。
- ここで例として取り上げている sunflower の頭状花は特殊で、たくさんの「花」が寄せ集まってできた「花房」です。(一次)花房:主枝上の花の数パラメータの増減は、頭状花の周辺の花びらの数や、花の中心部の密度に関わります。また、花房(Inflorescence)セクションにあるいくつかのバラメータは、頭状花序の時、無効になります。結局、頭状花序を選択している場合、花房セクションのパラメータ値を操作して、「スプレー咲き」に見えるような花の増やし方をすることはできないとおもいます。
- 右の図は、(一次)花房:頭状花序(例えばヒマワリ)(Inflorescence:Head type (like sunflower))の値を「no」にした後、ひとつの「花」として頭状花らしきものを描きなおしてから、花房内の花の数を調整したものです。
- 一列目の花弁をたくさん放射状に据えてから、その上に二列目の花弁をやや小さく放射状に敷き詰めて、色を茶色っぽくすることで、ひまわりの頭状花らしきものを作っています。
- 花序は、花房の主枝に1つの花、二次分枝に3つの花をつけてから、花房セクションのパラメータを調整して形を整えています。花房のパラメータはたくさんあって、各部を細かく調整できます。
花房セクションのパラメータ
- ひとつの花をささえる柄を pedicel(花柄、花梗。花房内の花柄をとくに小花柄という)と呼び、複数の花を共通して支える柄を peduncle(花房の茎、花房柄)と呼びます。peduncle は、Inflor. stem とか stalk とか表記されていることもあります。ややこしいてすね。
- pedicel と peduncle は、別々の色を指定できます。((一次)花房:花房の茎の色(Inflorescence:Stalk color)、および(一次)花房:花柄/小花柄の色(Inflorescence:Pedicel color))。
- 角度に関するパラメータには以下のものがあります。
A′
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(一次)花房:頂生の場合、本体の茎と花房柄とで作る角度 (Inflorescence:Angle of peduncle with plant stem if apical)
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A
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(一次)花房:腋生の場合、植物本体の茎と花房柄とで作る角度 (Inflorescence:Angle of peduncle with plant stem if axillary)
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B
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(一次)花房:花房の主枝と分枝の作る角度 (Inflorescence:Angle of inflor. branch with inflor. stem)
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C
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(一次)花房:花房の茎と小花柄とで作る角度 (Inflorescence:Angle of pedicel with inflor. stem)
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D
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(一次)花房:花の間の角度(花房茎が曲がります) (Inflorescence:Angle between flowers (to bend infllorescence))
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- 長さに関わるパラメータには以下のものがあります。
A′
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(一次)花房:頂生(枝の先端)の場合、最初の花房茎の長さ (Primary stalk length if apical (terminal))
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A
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(一次)花房:腋生の場合、最初の花房茎の長さ (Inflorescence:Primary stalk length if axillary)
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B
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(一次)花房:(花と花の間の)節間の長さ (Inflorescence:Internode length (between flowers))
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C
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(一次)花房:花柄/小花柄(花の柄)の長さ (Pedicel (flower stalk) length)
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Bの(一次)花房:(花と花の間の)節間の長さは、二次分枝がある場合、主枝上の分枝と分枝の間の長さも制御するようなので、注意が必要です。例えば、このパラメータ値が0の時、主枝上の先端から直接、小花柄が叢生するように描かれるでしょう。言葉で説明するより実際にやってみた方が分かりやすいと思います。 - 右の図と左の図はほとんど同じに見えますが、パラメータが異なっています。
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(一次)花房:主枝上の花の数 (Primary inflorescences: Number of flowers on main branch)
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5
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0
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(一次)花房:二次枝あたりの花の数 (Primary inflorescences: Number of flowers per secondary branch)
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0
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1
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(一次)花房:二次枝の数 (Primary inflorescences: Number of secondary branches)
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0
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5
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(一次)花房:花房の茎と小花柄とで作る角度 (Primary inflorescences: Angle of pedicel with inflor. stem)
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40degree
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40degree
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(一次)花房:(花と花の間の)節間の長さ (Primary inflorescences: Internode length (between flowers))
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0
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0
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(一次)花房:花柄/小花柄(花の柄)の長さ (Primary inflorescences: Pedicel (flower stalk) length)
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2cm
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2cm
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(一次)花房:頂生(枝の先端)の場合、最初の花房茎の長さ (Primary inflorescences: Primary stalk length if apical (terminal)
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5cm
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5cm
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(一次)花房:(花と花の間の)節間の長さパラメータ値が0なので、主枝上の花と花の距離が0になると同時に、二次枝の長さも0になっています(両方を別々に制御する方法はないと思います)。左の植物は、主枝上に5つの花を持っていますが、花と花の間の距離が0なので、主枝の(一次)花房:頂生(枝の先端)の場合、最初の花房茎の長さパラメータ値の部分からすぐに輪生するように花がついています。二次枝は0です。右の植物は、二次枝を5本持ち、各二次枝に1個ずつの花をつけます。主枝の花と花の距離が0なのと同時に二次枝の花と花の距離も0なので、主枝の(一次)花房:頂生(枝の先端)の場合、最初の花房茎の長さパラメータ値の部分以外の花房茎がすべて見えなくなっています。結果として右の植物と左の植物は、外見上はほとんど違いが見られません。
- その他の花房のパラメータについては、花房のパラメータを見てください。