PlantStudio が得意な植物、苦手な植物
(Botanical strengths and limitations of PlantStudio)
植物の構造は驚くほど多様で、ルールなど度外視した例外的な植物がいくつもあります。(植物の形の多様性がもたらす魅力的な外見については、Bellの著した Plant Form を見てください)。PlantStudio は、多様な草本(herbaceous)植物を幅広くシミュレートし描き出そうと試みていますが、一部の植物については対応から除外せざるを得ませんでした。PlantStudio のこのバージョンでうまく描くことのできる植物と描くことのできない植物の構造のタイプを以下に記しておきます。
このバージョンの PlantStudio が得意とする植物の特徴
(Plant features this version of PlantStudio draws well)
- 自身の力で立っていることのできる植物。野生の花、園芸植物、観賞用植物、などの多くがこれに含まれます。自分の力で立っているためには、ある程度の茎の固さが必要になりますが、そうした範囲内で、茎の固さの程度は様々です。
- 一個体上に、一次花房(雌花/両性花)、二次花房(雄花)、一つないし複数の花、を持つ植物。例えば、トウモロコシやキュウリがこれにあたります。それらの花房や花は、それぞれ、別々の生長パラメータ、タイミングバラメータを持っているので、異なる花の構造を可能な限り再現できます。
- 雌雄異体の植物(dioecious plants)。雄花だけをつけるか、雌花/両性化だけをつけるか、のどちらかである植物です。例えば、アスパラガスがこれにあたります。一方は、一次花のみをつけ、もう一方は二次花のみをつけるような、別々の2つの植物を作り出すことで、雌雄異体の植物を作ります。
- 一次花は、花弁(petal)が最大5列まで、がく片(sepal)、めしべ(pistile)、おしべ(stamen)、を持つことができます。二次花は、花弁が一列、がく片、おしべ、を持つことができます。
- 実。実の生長のタイミングと実の形を選べます。実の形は自分でデザインできます。
- とう立ち(bolting)。初めの年をロゼット(rosette)で過ごし、次の年にとう立ちするような植物がたくさんあります。例えば、カブがそうですし、野生植物の多くがとう立ちします。とう立ちの時期や程度を設定することができます。
- 特別な葉序の開度(phyllotactic angles)(開度とは、葉と次の葉が作る角度)。デフォルトの開度137.5°は、最も一般的なものですが、例外もあります。
- 巨大化した腋芽。例えば、芽キャベツみたいな。
- 仮軸分岐(Sympodial branching)(頂芽が成長せず、腋芽が成長して次の茎と葉を作っていくもの)。例えば、トマト。多くの植物は単軸分枝(monopodial branching)(頂芽が優先的に新規の枝と葉をつくるもの)です。
- 多様な分枝のパターン。様々な分枝の指数を用いて、分枝(およびその結果としての植物の姿)をコントロールできます。二次分枝(三次分枝、…)や頂芽優勢の指数、をチェックします。
- 多様な植物生長パターン。植物バイオマスの分配と生長のタイミングを細かくコントロールすることで、植物の生長の様子やその姿かたちを遣り繰りできます。
- 羽状複葉(pinate compound leaves)、掌状複葉(palmate compound leaves)、托葉(leaf stiles)。
- 最も一般的な花房の各種タイプ。リストからタイプを拾い上げるよりも、パラメータをいろいろいじって、花房をカスタマイズし、自分の思い描く外観に近づけていくのがよいでしょう。花のつくタイミングや花の咲く順序(下から上に、あるいは上から下に)を操作することもできます。
- 植物の根の上端を描くこと。例えば、ニンジンやビートなど。
このバージョンの PlantStudio が苦手とする植物の特徴
(Plant features this version of PlantStudio does not draw well)
- 垂れ下がり植物、張り付き植物、つる性の植物、ぶら下がり植物。PlantStudio は、重力の効果をシミュレートしていないので、植物自身で立ち上がるような植物に適しいます。茎が湾曲した植物を作り出すことはできますが、重さを支えている茎の現実的なモデルを PlantStudio は持っていません。例えば、columbine(オダマキ、キンポウゲ科オダマキ属)のような植物は、PlantStudio ではうまく描けません。PlantStudio は、花がうつむいたり下を向いたりするのをシミュレートしないからです。
- 刺(thorn)、不定根(adventitious roots)、輪生の葉(whorled leaves)、多様な形の葉、栄養生殖(匍匐枝(runners))、ほか一般的でない植物の構造。
- 3Dオブジェクトを回転しながら円状に配置することでは表現しきれないような部分を持つ花。例えば、蘭(orchids)の花のような。
- あまり一般的とはいえない多くの花序の構造。
- 匍匐枝(runners)や支持根(prop roots)、余り一般的とはいえない根のシステム。
- 複数の色を持つ葉や花。例えば、コリウス(coleus:シソ科コリウス属の観葉植物)やある種のスミレ。
- 本物の葉脈パターン。PlantStuido の3Dオブジェクトに一工夫して、葉の葉脈もどきを作ることはできますが、PlantStudio そのものは、葉脈の実際のモデルを持っていないし、葉脈を描こうともしません。
- 単子葉植物(Monocotyledonous plants (monocots))。PlantStudio では、単子葉(monocots)は、一枚の子葉を表示することのみ行なわれます。実際の単子葉植物の成長は、双子葉植物とは全く異なっています。また、単子葉植物の葉の成長は、正確には描かれません。双子葉植物の葉は、その縁の部分に分裂組織をもっていますが、単子葉植物の葉の分裂組織は、葉の基部に見出されます。PlantStuido の葉の成長は、双子葉のものをモデルにしています。
- 木。PlantStudio は、木の胴回りを太くするような二次生長をシミュレートしていません。また、多年度の生長を操縦できません。木のような外観を持つ植物を作ることはできるけれども、木のように生長はしないし、おそらく描くのにものすごく長時間かかるでしょう。
PlantStudio の将来のバージョンでは、これらの制限のうち、少なくともいくつかについては前向きに取り組みたいと思っています。PlantStudio の次のバージョンでこんな特異な植物の構造を見てみたい、というようなことがありましたら、あなたの植物希望リストを私たちに送ってください。私たちは、あなたが望んでいるところのものを知りたいと思います。